職場のパワハラは以前から耳にしますが、あなたはモラハラに悩んでいませんか?モラハラは暴力やあからさまな暴言とは違い、陰湿ないじめと同じです。あなたが1人で悩んでしまわないように、モラハラの対策とチェック項目を元に、乗り切っていきましょう。
モラハラとは?
モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略で、主に精神的な嫌がらせのことを言います。
もともとフランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した言葉。
イルゴイエンヌは、社会は精神的な暴力に対しては対応が甘いが、精神的な暴力は肉体的な暴力と同じ程度に、場合によっては肉体的な暴力以上に人を傷つけるもので犯罪であると述べる。
このように、まだまだモラハラに対して社会が目を向けていない、気づきにくい現実があります。
しかしモラハラは人を精神的に傷付けるもの。日本では法で罰せられるケースがまだ少ないのですが、立派な犯罪と言えるのです。
モラハラとパワハラとの違い
モラハラより先に世間に知れ渡っているパワハラ。その違いは何でしょうか?
パワハラは「パワー・ハラスメント」の略。このパワーは「権力」のことであり、暴力だけを指すわけではありません。
例えば上司が権力を振りかざして、部下を激しく叱責したり暴力を振るうのもパワハラです。
モラハラの場合、家庭でも問題となります。権力が関係ないところで起きる精神的嫌がらせなので、同僚でもモラハラがあり得ます。
モラル=道徳・倫理 という意味、ハラスメント=嫌がらせ という意味なので、モラル・ハラスメントは「非道徳的な嫌がらせ」と言えます。
モラハラはパワハラよりも更に陰湿な場合が多いので、周囲に気づかれないことも。そうなってしまうと、1人で抱え込んでしまい限界を迎える人も出てきてしまいます。
パワハラとモラハラの違い
パワー・ハラスメント
上下関係があり口答えできない
人前での暴言や暴力
周囲の人が気づく
モラル・ハラスメント
上下関係がない
暴力ではなく精神的嫌がらせ
加害者に悪意がないことも多い
モラハラの具体例と発言例
私は様々な職場でたくさんの人を見るなかで、モラハラを何度も見かけました。その具体例と発言例を挙げます。
無視される
職場で普段から仲の良さげだったA美さんとB子さん。2人とも独身でしたが、A美さんが先に結婚。
そこから2人の間に亀裂が生まれました。B子さんはA美さんを無視するようになったのです。
メールを送っても無視、挨拶をしても無視。1回や2回だけでなく、継続的でした。
B子さんは他の人とは普通に話しているので、A美さんは「無視されている」と悩んで会社を休むようになってしまいました…
無視は女性に多いと感じました。ひょんなことから相手を敵視し、意図的に嫌がらせをした例です。
その他にも「挨拶を無視される」というのは割と聞く話です。悪意、明らかな敵意を持った挨拶の無視は、モラハラに該当する可能性があります。
ただし挨拶に関しては、とくに年配の男性ほど「挨拶を返さない」「挨拶を返しているけど聞こえないだけ」「そもそも挨拶が聞こえていない」ということが多いんだな…というのが私の経験上わかってきました。
例えば挨拶の声を大きくするなど自分の行動を変えてみても改善が無いなら、モラハラに該当するかもしれません。
仕事が遅いと言われたり、ため息をつかれる
職場の事務員であるB子さん。あるとき仕事の都合で、隣の部署のA子さんと仕事をすることに。
しかしバリバリ仕事をするB子さんは、おっとりしたA子さんにイライラ。
「なんでこんなのもできないの?」
「ちょっと仕事遅いよ?」
とかなり直接的な言葉をかけてしまったのです。
B美さんはA子さんのスピードにイライラしてしまい、つい話を遮ったり、ため息をつくことも。
そして別室での説教もありました。A子さんはB美さんに2人きりの部屋に連れていかれ、しばらく叱責されたのです。
A子さんは耐えかねて、退職してしまいました。退職間際になって、辛い想いを私に打ち明けてきたのです。
実はB美さんには、悪気がありませんでした。仕事をバリバリ進めたい、はっきりとした性格のA子さん。同僚にもしっかりしてもらいたいため、つい言いすぎていたようです。
しかしこれもA子さんにとってはモラハラであり、被害者です。自分にそのつもりがなくても、知らずのうちにモラハラになるケースもあるので要注意。
孤立させ、コミュニケーションを取らない
同僚のA君は、Bさんと同じプロジェクトで仕事をしていました。A君はBさんとコミュニケーションを取ろうとするのですが、Bさんはメールで済まそうとします。
Bさんは他の人とは話をしているのです。にもかかわらず、A君にはメール中心。それでいて、仲間内の飲み会にも誘いません。
単純に、BさんはA君が気に入らなかったようです。
おまけにBさんは、A君に「業務怠慢だ」などとメールを送りました。真面目にやっているA君は、心を病み会社を休むようになってしまいました。
直接的な暴言でなくても、仲間はずれやメールでの暴言も、立派なモラハラです。
本当に業務怠慢な人へ送るならば仕方ないこともありますが、落ち度が明らかでないときはモラハラになり得ます。
モラハラかどうかのチェック項目
先ほど挙げた具体例以外にも、モラハラになり得ることがたくさんあります。チェック項目を挙げたので、確認してください。モラハラは知らずのうちに加害者になっている可能性もあるので、自身にも当てはまらないかチェックすることが大切です。
モラハラかどうかのチェック項目
- 無視する
- 仕事を与えない
- 仕事を与えすぎる
- 飲み会や会議に呼ばない
- 孤立させる
- 相手が間違っていると決めつける
- 何がなんでも相手を許さない
- 相手に主張させない(話を遮る)
- 舌打ちやため息
- 相手を一方的に否定する
- メールでの暴言
- 相手の家族に対する暴言
モラハラのポイントとしては、職務を越えた嫌がらせであることです。例えば職場の全員が忙しい状態で、仕事が与えられすぎてもモラハラとは呼べないことも。その場合は単純に劣悪な職場環境であるということになります。
また、モラハラのポイントとしては「継続的に嫌がらせされる」ことにあります。一時的だったり、1~2回無視された程度では、勘違いの可能性も。
そのため「モラハラかな?」と感じたら、状況を記録しておくことも大切です。
あなたの体調に現れたら要注意
モラハラの大切なチェック項目として「あなたの体調の変化」もあります。
ささいな嫌がらせでも継続されることで、突然の体調不調や、うつ状態おちいることも。
あなたに次のような変化が現れたら、モラハラによる精神的ダメージを疑ってください。
精神的ダメージによる悪影響
- 会社に行きたくなくなる
- 職場の前で足がすくむ
- 頭痛・めまい等の身体的不調
- 人と話すのが怖くなる
- 食欲不振
- 眠れない
- イライラする
体調に異変が現れてしまったら、無理に会社に行くのは辞めましょう。
私は以前、仕事が嫌で精神カウンセラーの面談を受けたことがあります。耐えきれなくなり、カウンセラーに思いの丈をぶつけました。
そのときは気持ちが晴れて、なんとか仕事に復帰することができたのです。
仕事は、あなたの大切な心と身体を犠牲にしてまで守るものではありません。あなた自身を大切にしてください。
モラハラ対策はどうしたらいい?
自分はモラハラを受けているかもしれない、そう思ったら対策をとりましょう。対策としては、根本的対策、回避する対策、法的対策があります。
上司、社内の相談係へ報告し対策を取ってもらう
根本的な対策として、上司や社内の相談役に報告する方法があります。大きな組織であれば、コンプライアンス係に相談することも可能。
相談するメリットとしては、モラハラ加害者に直接注意したり、周知徹底ができるため職場全体の環境が改善されることがあります。
ただし、報告することで更に嫌がらせが陰湿になることも考えられます。職場全体の環境や前例を踏まえ、報告するかを判断しましょう。
モラハラ被害から逃げる
モラハラを回避するため、あなたがその場を離れてしまう方法です。異動、転職をしてモラハラ加害者のいないところに行くのも手です。
転職は逃げではありません。あなたが合わないと思う環境にいては、あなたに何のプラスにもなりません。思い切って環境を変えてみましょう!
法的手段で対策する
社内で相談してもどうもならない、あなた自身も我慢の限界、というときは法的手段に移ることも手です。
「法テラス」は国が設立した公的な機関。法の相談に対して、あなたがどうしたらいいのか、適切な案内役となってくれます。
また各県、自治体ごとに「労働相談コーナー」が存在します。最寄りの相談コーナーで、モラハラの悩みを相談してもよいでしょう。
そのほかにも「あかるい職場応援団」職場環境改善のための案内を行なっています。
モラハラを始めとするハラスメントは本来あってはならないこと。法的手段で解決していくのも大切です。
自分を守るため、記録を残そう
社内で相談するにも、法的対策をとるにも、記録を残しておくとあなたの武器になります。
可能であれば、嫌がらせの言動を録音したり、メールやLINEなら記録しておきましょう。
日記等のメモでも効果ありです。1,2回のメモなら効果は少なくても、長期に渡るメモがあれば捏造と取られることも少なくなります。
ただし録音するときは注意が必要。企業や録音する場所によっては、守秘義務違反などを突きつけてくる会社も無いとはいいきれません。
もし録音が上司や会社に発覚した際は、モラハラの現状を伝えて対応を取ってもらうようにしましょう。それで会社が動いてくれなければ、会社自体が安全配慮義務に違反している状態。
録音することはモラハラを立証する強い武器になりますので、状況に応じて行動してください。
あなたは悪くない、1人で悩まないで!
さいごに、モラハラを受けてしまったあなたは決して悪くありません。一方的に嫌がらせを受けて、少なからず精神的ダメージを負ってならば、その状況から解放されるべきなのです。
悩まず相談したり、環境を変えて自分を救ってあげましょう。
そしてモラハラを含むハラスメント全体が、社会にもっと認知されて対策が取られなければいけません。
もしあなたがモラハラを受けてしまったなら、あなたが行動すること自体が組織や社会にとっても前に進めることなのです。
あなたの問題が解決されることを願っています。